イタリア製の革製品は世界一だといわれていますが、その理由は、伝統工芸として引き継がれた革加工の職人技にあります。ここでは、イタリアの革製品の伝統と、意外に知られていない優れた革ブランドをご紹介します。
イタリアン・レザーは世界最高品質
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イタリアの皮革工芸の歴史はとても古く、紀元前のヘレニズム時代には、すでに革なめしの技術があったようです。それだけではなく、革なめしの工程を分業化し、同じ地域で活動する職人同士で、同業者組合を作っていたことも記録されています。当初は同じ地域に住んでいるだけで、それぞれがばらばらに革なめしに取り組んでいました。それがお互いに腕を競い合ったり、協力し合うようになっていったのです。組合の活動が最も盛んだったのは、中世の時代です。フィレンツェ共和国が組合に多くの権限を与えたので、革なめしの技術は大きく発達し、天才的な親方や優れた職人がたくさん誕生しました。当時の分業体制は準備をして革のなめしを行う者、なめされた革の仕上げをする者、メタル張りをする者、なめし革を売る者といった分け方をされていました。なめしと商売の両方を行う親方もいたそうです。革なめしには30以上の工程があり、とても手間がかかります。そのため多くの職人が必要で、当時のトスカーナ地方では失業者がほとんどいなかったといわれています。16世紀にメディチ家がトスカーナ地方を支配するようになると、革なめし組合は解体され、新たに協会に編成されました。さらに時代が進んで18世紀になると、協会はフィレンツェ商工会議所の中に組み込まれました。社会体制は変わっても、自国の歴史や文化を愛する国民性からか、職人たちの仕事のスタイルは組合の頃と変わりませんでした。中小企業や、零細企業、家族経営のままで仕事を続けたのです。中小企業では、大企業のように大きな利益や社会的地位を得ることができません。しかし、現場の職人と経営者が一体となって、技術を研究したり、新たな挑戦をすることができます。また、新しい職人に技術を仕込んでしっかり育てることができるので、技術と伝統を後の世代に伝えることができました。イタリアの革なめしを行っているのは、主にアルノ川流域のピサやフィレンツェと、その付近の地域で、レザーエリアと呼ばれています。現在約10万人がレザーエリアに住んでおり、その中の約1万人が革なめしに関する仕事に就いています。レザーエリアには約900の中小企業や零細企業があり、主になめし革や革製品、革小物を製造しています。そのほか、なめしのための化学処理をする機械を扱う企業や工場、運送業など、副次的な仕事を行う企業も多く存在しています。革職人たちは、世の中の動きに流されず、伝統を大切にしてきました。また、細部まで手を抜かない職人技をずっと守ってきたからこそ、世界一のクオリティといわれる革製品を作ることができるのです。
Sermoneta gloves(セルモネータ・グローブス)
革手袋専門のブランドです。トレンドに敏感なデザイン性、革の発色の美しさがこのブランドの大きな特長といえます。写真の革手袋は表革の素材には高級なヤギの革を、裏地の素材にはカシミヤやシルクを使用しています。製造から仕上げまでの全工程を熟練の職人が手作業で行っているので、見た目、着け心地ともに最高レベルです。また、毎年新しいデザインが発表されているので、たくさんの種類の中から好みの手袋を選ぶことができます。シーンに合わせていくつか揃えるのも良いですね。
IL BISONTE(イルビゾンテ)
バッグや財布などをメインに扱っているブランドです。オリジナルのヌメ革で作られた製品は、経年変化を楽しむことができるので特に人気があります。また、シンプルなデザインが多いのも特徴の一つです。飽きずにずっと使えますし、どんな服にも合わせやすいのが嬉しいですね。
Felisi(フェリージ)
トラディショナルで上品なデザインが特徴のブランドです。素材にはイタリア製の上質な革が使われています。特にヌメ革で作られた男性用のビジネスバッグは、デザインが良いだけでなく、ポケットがたくさんついていて機能性が高いので使いやすいですよ。昇進や転職などの機会や、自分へのごほうびとしてもおすすめです。
歴史と伝統に裏付けされたイタリア製の革製品は、身につける人を格式高く見せてくれます。ビジネスやプライベートの相棒として、上質なアイテムを選んでみてはいかがでしょうか。